「肌色」という言葉をあまり聞かなくなったと感じることはありませんか？
あなたはまだこの表現を使っていますか？昔、私が子供の頃にはクレヨンに「肌色」という名前がついていましたが、今では「薄橙」（うすだいだい）として表現されています。
色を指す言葉が共通であれば、その言葉を使うことに特に問題はないように思われるかもしれません。
しかし、日本では多様な肌の色を持つ人々が増え、「肌色」という一つの言葉で全てを表現するのは適切ではないかもしれません。
この記事では、「肌色」の代わりに使える他の言葉と、その変更の背景について詳しく解説します。
肌色が言い換えられた3つの色とその意味
薄橙（うすだいだい）
最初に紹介するのは「薄橙（うすだいだい）」です。
この色は、ダイダイという果物の色に由来しており、ダイダイの色よりも薄くしたオレンジ色です。
ダイダイの色は鮮やかなオレンジ色で、とても目立ちます。
オレンジ色と同じ意味で、黄色と赤の中間に位置する色です。
ペールオレンジ
次に紹介するのは「ペールオレンジ」です。
ペールオレンジは、英語の「pale」が「薄い」という意味を持ち、オレンジ色の明るいバリエーションを示します。
簡単に言うと、薄橙とペールオレンジはほぼ同じ色合いです。
ベージュ
もう一つの代替語として「ベージュ」があります。
ベージュはフランス語に由来する色名で、淡くて明るい黄色や茶色のニュアンスを持ちます。
日本工業規格では、淡い灰色がかった赤みのある黄色と定義されています。
日常会話では、薄橙やペールオレンジといった表現はあまり聞かないかもしれませんが、化粧品ではライトベージュやピンクベージュといった色が使われています。
ベージュは日常生活でよく見かける色であり、新しい肌色の表現としてなじみやすく、違和感なく使える色です。
「肌色」の言い換えはいつから？
「肌色」という言葉は、もともと日本人特有の肌の色を指す淡いオレンジ色系の色名でした。
この言葉は、仏教が広まる前の日本、江戸時代以前には「宍色（ししいろ）」として知られていました。
「宍（しし）」は古くから食べられる動物の肉を示す言葉でしたが、徳川綱吉の「生類憐れみの令」以降、「宍色」の呼び名は避けられ、「肌色」という言葉が一般的になりました。
自由画教育が導入された大正時代になると、絵具や色鉛筆の需要が増えました。
特に昭和初期には、子供たちが人の顔を描くときに使う色として「肌色」が一般的に使われるようになりました。
しかし、その後、この言葉は徐々に使われなくなりました。
その転換点は、1950年代から60年代にかけての「アフリカ系アメリカ人公民権運動」の影響でした。
この運動の影響で、人の肌色を指す際に使われていた英語の「flesh」という単語も、「peach」という表現に変わりました。
これは、肌色を一つの色に限定することの適切さに疑問が投げかけられた結果です。
「肌色」という表現が変わった背景
日本においては、人種差別に対する認識が低いと長い間指摘されてきました。
そのような中で、消費者の中には、多民族国家である日本で一つの色を「肌色」とすることに差別的な意味合いがあるとする声が上がりました。
学校教育の現場からも、「肌色」という表現を使うことに対する抵抗感が強まりました。
この問題は、2000年頃に大手クレヨンメーカーが製品名を変更するきっかけとなりました。
ぺんてるは「ペールオレンジ」へ、サクラは「薄橙」という名称へと切り替えました。
これにより、色鉛筆や絵の具などの画材からも「肌色」という名前が次第に消えていきました。
まとめ
「肌色」の色名の変更は、商品ラベルにおける色の表記を更新することから始まりました。
それにもかかわらず、日本においては肌の多様性や人種に関する認識がまだ十分ではないとされています。
「肌色」という表現は、状況に応じて適切に使用できますが、肌の色が一様でないという現実を正しく理解し、尊重することが大切です。
「肌色」という言葉の変化は、社会の変化や国際的な流れを反映しています。
これからは、多様な肌の色を尊重し、さまざまな色を取り入れた表現を使うことが重要です。
私たちの生活や教育の中で、こうした多様性を受け入れ、理解することが求められています。
多様な肌色を尊重するために
色の名前を変えることは一歩ですが、それだけでは十分ではありません。
私たちは、日常生活の中で多様な肌色を尊重し、受け入れる姿勢を持つことが大切です。
例えば、教育現場で多様な肌色をテーマにした授業を行うことや、家庭で子供たちにさまざまな肌の色について話すことが挙げられます。
また、メディアや広告でも多様な肌色を取り入れた表現が増えることが期待されています。
これにより、すべての人々が自分の肌色に誇りを持ち、他の人々の肌色を尊重する社会が築かれるでしょう。
おわりに
「肌色」という言葉の変化は、私たちの社会が多様性を受け入れ、尊重しようとする姿勢の表れです。
これからも、さまざまな肌色を尊重し、より多様で豊かな社会を目指していきましょう。
